【なつかしい】③

K:そう、あるがままっていう言葉は昔からある。ただ、皆さんの言うあるがままって、どうせ抵抗したってしょうがない、抵抗するとかえって疲れる、そんな思い通りに行くほど人生は簡単なもんじゃない、楽なもんじゃない、だからあるがまま。下手に抵抗するとその分だけ傷もつき疲労もするからと、また先入観が登場するんですよ。僕が言いたいのは、出来事そのものにも人格みたいなものがあるということです。悲しみというものにも喜びというものにも、まるで人間のように人格が存在している。退屈にも怒りにも人格があるんです。なぜなら、人の世で起きてる事はすべて、人間たちがいる場所で起きてるという事ですから。

【なつかしい】セミナーの中でも触れますけど、多くの人が自分の毎日を、自分の人生を、輪切りにしていくんですね。『ああ、今日はろくなことがない』や、『俺って、ここ1~2年ぱっとしない』などと。でも実際はどの出来事も途切れがないのに、ぱっとしないという言葉をポンと言い放つ。典型的なつぶやきで多いのが『1年間がんばって、結局こういうことか』です。シマウマやカバは、1年経ったとかカウントしてないですからね、彼ら。動物はなぜ地球上にいるのかっていうと、別に理由があろうがなかろうが既にいるから、という言い方もできるけど。実はここで初歩的なヨガの話になりますが、バッタのポーズ、猫のポーズ、ライオンのポーズ、あの生き物のポーズを物理的にも真似るところに大きなヒントがあります。もしヨガをやっている人がいたら、どうぞ今度から本当にその動物になってほしいんです。とてもなつかしい感覚にリンクしますよ。

あるがままを一般的には、厭世的、所詮なに言ったってというとらえ方をしていますよね。もちろん、ケ・セラ・セラみたいな言葉もありますよ。やって来るものをフウッと柳に風のようにやり過ごす。『だって、しょうがないじゃない』みたいに。それは一方で間違ってはいないんですが、僕が思うのは、出来事っていうのはあなたにやって来るんじゃなくて、あらゆる出来事はあなたと共に起こっているということです。あなたが欠けると、その出来事は起きないんです。『わあ、雨に濡れちまった』って、それはあなたがいたから濡れたんです。もし、あなたが部屋の中にいたら、『ああ、あの人、雨に濡れてる』というのを自分の部屋から濡れずに見ているという出来事が起きるんです。つまり、あなたの出来事はあなたと共に起きている。それなのに多くの人は、不幸な事は自分にやって来ないようにと、自分と出来事を分離してるんですよね。出来事とあなたの本当の関係を粒子で説明すれば、実は溶けてるんでしてね。

Ch:溶けてる?

K:外側も内側も同じものということです。ところがどうしても僕らには眼があるので、『わあ、外は風が吹いてる』とか、『山に雪が積もっている』とか、『人が公園を歩いている』とか、どうも自分の眼球を肉体の外を見るものだと勘違いしてしまっている。本当は自分の内側を見るんですね。僕のひらめきで申しますと、実はこの外側いるんです、僕らは。外側にいるけど、それを確認する場所があなたの肉体でありましてね。『今日は寒いな』とか、『長年これをやってきたな』とつぶやいたり思ったりする。『あの人って、今ごろどうしてるのかな』と、来た封書を自分の手で切る。便せんを開く。『わあ、まだこの便せんを使ってるんだ』そうやって2枚目3枚目と読み進む。触る、切る、開く、読む、つぶやくという感触や感覚を自分で感じることによって、自分の内部に取り込んでいるんです。実は外側の出来事は、内側のあなたと共にしか起きない。あなたにとっての出来事は、あなたがいないとhappenしないんですよ。その空間をビジュアルに言えば、肉体の外側にあなたがいるんですけどね。ところがどうやら内側と思い込んでいるようです。

だから、着飾る、部屋に入る、ドアを閉めるとか、目をそむけるとか、内側中心に生きているので、いつまでたっても侵略されるとかね、被害妄想になっていくんです。外側です。あるがままであるけれど、あるがままって言うと出来事の方が先行してますよ。言葉にこだわれば、いるがまま、あなたがいるがまま、もしくはそろっているがまま、初めから全部そろっているんです。ひとつ欠けても起きないです、出来事は。出来事を擬人化すれば、出来事はものすごく寂しがり屋、いつもあなたと居たい。その時に、うん、いい出来事だけ起こってくれと、また始まるわけです。多くの人が出来事を輪切りにして受け取るんですね。そうするのが癖になっている。『今日の成果は』『3年がんばった』『おお、苦節10年』みたいに、どうしても輪切りする癖が私たちにはある。サイとかカバとか、キリンもシマウマも『ええっと、過去3年が』って、やりません。

~次回へ続く~

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