エゴの回収

人間の脳。その同居人、エゴ。ある日エゴが同居をやめて、その人から離れるときがやってきます。死です。脳が停止するのですから、エゴは同居を続けることができなくなるのです。そこでエゴは元いた場所である【時間】に戻ります。そしてエゴの本来の姿としての【火】に還るわけです。

人が亡くなったとき、私たちは荼毘に付します。いわゆる火葬ですね。世界では、土葬や水葬、風葬、さらには林葬や鳥葬という風習もあります。火葬は文字どおり火を使いますから、エゴは本来の姿へとそのまま帰還していきます。ならば、他の葬儀でのエゴの帰還の様子はどうなのでしょう。

実は土葬も水葬も風葬も林葬も鳥葬も、すべてにおいてエゴは【時間】と【火】に回収されていきます。その様子を翻訳しながら述べてみましょう。
火葬に比べて他の葬の儀は、ゆっくりという時間を必要としていることがわかります。遺体は埋葬された後、長い【時間】をかけて土に還っていきます。土にはバクテリアがいて、生態系の物質循環の役割を果たしています。つまり、遺体はバクテリアのエネルギーになるんです。カロリーという熱還元【火】ですね。そうやって土に同化してやがては『土になる』のです。

水葬はどうなのでしょう。「海の藻屑となる」という表現があるように、海にはバクテリアよりも大きい生物が多種類にわたって棲息しています。その生き物たちの食物連鎖の出発点に、水葬にされた遺体があると思ってください。あとは連鎖していく捕食のストーリーを想像してみてください。そこには、食べて食べられるという【時間】があります。そのときに、消化されて栄養という【火】になるのです。

風葬はどうなのでしょうね。その続きは次回にしましょう。

ONE

ONE 作詞•曲 守沢 鷹 演奏 ザ•バディタイム

からだの中にも、もひとつの別の世界がある
自分の噂話を自分が一番多くしている
僕だけかな、君もかな、みんなもかな

あなたは鏡のあなたに、素知らぬ顔で
身支度を整えて後にする、それを大人というのなら
鏡の前に、もう一度、もどろう

大人に聞いてみたい、大人がいるとしたら
いつから大人になったのだろう
何年、何月、何日に

心を浮かべる深い河を、も一度さかのぼれば
流れるせせらぎのたてる音が、子どもの声に聞こえる
僕のかな、君のかな、みんなのかな

あるだろう、あなたにも何気なく人を眺めたことが
その人が思い出し笑いをしている、それを見てあなたも
思わず、いつしか、微笑んだはず
僕だけかな、君もかな、みんなもかな

時間の里山

ヒロシマ・ナガサキ・フクシマ。一瞬にして人生を変えてしまった場所があります。この国の場所とは、この星の場所ということです。地球には、ビキニ環礁・スリーマイル島・チェルノブイリという場所もあります。人間のエゴによって濃くされてしまった時間とその場所は、元へ戻ろうとします。時間の本当の姿である、薄い時間へ淡い場所へと。

濃い場所はというと、たとえば原発事故が起きた場所がそうです。思い出して下さい。わずか5年前のことです。
「事故直後の現場には、放射能が強く出ています」
「ただ今、高濃度のため半径5Km内には近づけません」
「汚染が拡大しています」
「線量の半減期は、数ヶ月、数十年、物によっては数万年」
「西寄りの風で太平洋に汚染が拡がっています」
「ただちに人体に影響があるということはない」

当時、私たちは異口同音につぶやいたものです。
「ただちに人体に影響が出ないということは、徐々に人体に影響が出るということ?」
「専門家が近づけない場所に、誰か近づける人っているの?」
この時の?マークは、疑問ではなく不安を表わしていました。こういう国家レベルの事件が起きたとき、たとえば戦争、たとえば原発事故、たとえば国家間の取り引き(密約)、こういったときは必ず情報が少なくなります。出来事が【濃い】ほど、情報は【薄く】なっていくのです。それは世界中の人が経験していることです。どうしてそうなるのでしょう?すべて人災だからです。

薄い時間とは、たとえばそれぞれの人生のことです。
☆生まれた日が違う→生まれた場所も違う→育った環境も違う→経験することも違う→それを心にどう刻むかも違う→そして亡くなる日も違う。
濃い時間とは、国家レベルの事件のことです。
★たくさんの人生たちが、同じ経験をさせられる→違う日に生まれたのに、同じ日に亡くなる→残された人は、遺族という同じ境遇にさせられる。

フィンランドでは、原発で生じたゴミ、核廃棄物を地下深くに埋めるために毎日のように穴を掘っています。10万年後まで封じ込める計画だそうです。それほどの時間をかけないと、放射能が無くならないからです。気の遠くなるような話ですが、ここで気を失わないで下さいね。続きがあるんですから。

核のゴミの地下貯蔵施設を示す、表示板のことで問題が起きているんです。危険を表示するのに、どんな言語がいいか、それとも単なるマークだけの方がいいのか。つまり、
•10万年は長い、その間フィンランド語が大変化をしたり消滅しているかもしれない。
•マークだと、果たして未来の人が正しく理解できるのか?誤解しないだろうか。
•たとえば3万年後とか5万年後に、読めない字や不思議なマークを勘違いしたら?
•エジプトやメソポタミアのような古代遺跡と思い、発掘調査を始めたとしたら?
•放射能がまだ無くなっていない時に開ければ、被曝する。

NHKのBS1で1度、渋谷の映画館でも観たドキュメンタリーです。学者や専門家が真剣に悩んでいる姿は、笑い飛ばしたいのにそれができないという、奇妙な疲労を私に与えました。火力•水力•潮力•風力•地熱•太陽光発電が束になったとしても、たった一ヶ所の原子力発電にはかないません。濃縮ウランやプルトニウムとは、人が造った最も濃厚なものです。手間ひまかけて発電するという薄い淡い時間に対して、核分裂で一瞬に熱量を出す原発ほど濃い時間はありません。人工の濃い時間たちでできている核廃棄物は、やがては薄くなるでしょう。やがてとは、薄い淡い時間たち数万年分だということです。

それが、時間の回収です。何がそうさせるのでしょう?自然の時間は薄くて淡く、人工の時間は不自然で濃いと知っている【純粋時間】が、そうします。そしてさらに【純粋時間】は、もう一つの作業を行います。人間のエゴの回収です。 ~次回に~