人物連鎖 ❽

赤ちゃんが口でオッパイを吸っている
赤ちゃんが目でお母さんのまなざしを吸っている
赤ちゃんが肌でお母さんのぬくもりを吸っている

お母さんの口はフフッと声をもらした
お母さんの目はニコッと笑っている
お母さんの体がも少しあったかくなった

生物にとって食物は欠かせませんが、中でも人間にとって最も大切な食べ物は、出来事と人物だと私は述べました。大人はそれを味わえなくなっているとも言いました。
では、そもそも出来事と人物はどんな味がするのでしょうか?
辛かったり甘かったり渋かったりするのでしょうか?
そのとおりです。私たちが世の中を語るとき、辛口の評価、ほろ苦い思い出、甘い計画、渋い人物といった味覚を表した言葉を使うことが多いではありませんか。ただ、残念なことに大人はその正しい味覚を失くしてしまった。というより、幼少期までに忘れさせられたと言っていいと思います。そう、時間の前倒しによって。

ずいぶん昔の交通標語にこんなものがありました。
『せまい日本、そんな急いでどこへ行く』
社会は忙しく動いています。今や都会に限らず、ゆったりと見える地方でも心の中は忙しい。ビジネス(仕事)の語源がビジー(忙しい)なのは皮肉なことです。

乳児は幼児に成長し、少年少女になってやがて成人していくのは、目に見えてわかります。肉体ほどビジュアルなものはありませんから。ところが、その中身の心の方はどうかというと、これが見えにくい。でも、そこをなんとか表わそうとしている言葉はあります。青年と成年です。辞書では以下のように出ています。
青年(青春期の男女。14,5歳から24,5歳まで)
成年(人が成長して完全な行為能力を有するに至る年齢。日本の民法上は満20歳)
ほう、そうですかと言うしかありません。

さて、赤ちゃんは出来事と人物をどうやって食べるのか。そこに焦点を当てましょう。一般的な食べ物は口から入ってきます。それがその子の肉体を成長させます。ところが、出来事や人物を食べるときは口以外の器官を使います。眼、耳、鼻、身の4つです。起きている事や人を、見て、聞いて、匂いを嗅いで、肌で感じて入ってくるのです。どこへ入ってくるのか?心という組織へ入ってくるのです。それがその子の意識と無意識を育てます。つまり、ヒトが心身ともに人間になり人物になっていくには、眼、耳、鼻、口(舌)、身の五官が不可欠ということになります。それが意識を作っていくのでしょう。

「五感のはたらき」プラス意識は、「第六感」という言葉を生みました。鋭く物事の本質をつかむ心のはたらきのことをそう言うようです。眼、耳、鼻、舌、身、意とくると何だか般若心経のようですね。関心のある方は、解説や関連の本が多数ありますからどうぞ。ここでは、乳幼児が出来事と人物をどのように消化していくのかを精査して行く方へカジをとります。

赤ちゃんの睡眠時間は日に16時間という調査結果が出ています。大人の2倍以上の睡眠は、肉体の成長のためだということは誰でも知っています。ところが、最近の研究で注目すべきことがわかったのです。それは、睡眠と記憶の深い関係です。
出来事の直後の眠りは、その記憶をより深く刻みつけるのです。
世界中の子どもは、良く寝ます。寝る子は育つ、本当にスクスクと育って欲しいものです。では、
叱られたあとは?大人よりは寝ます。
叩かれたあとは?直後は無理でも、よく寝ます。
無視されたあとは?さみしいけど、結局のところ寝ます。
怒りが収まらなくても?しだいに泣き疲れて泣き寝入りです。
あきらめてしまったあとは?それでもやっぱり寝てしまうのです。
睡眠でこの子は、果たしてどのような記憶を心に刻みつけるのでしょう。
~続く~

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